弁理士として特許事務所で働くことにあこがれを持っている人はきっと多いのではないでしょうか。
しかし、現実の特許事務所では、かなり過酷な雇用環境となってしまっているケースも少ないないようです。
今回は、弁理士有資格者として特許事務所で仕事をされた経験を持つ方にお仕事のインタビューをしました。
高井さんは、従業員約20名の特許事務所で弁理士として仕事をした経験を持つ方です。
学生時代からあこがれていた弁理士の資格を取得し、念願かなって特許事務所で働き始めることができたものの、理想と現実との大きなギャップに苦しんだといいます。
ジャンプできる目次
特許事務所の仕事を辞めたい理由は?私が体験した仕事内容

(特許事務所を辞めたい理由は?現役の弁理士有資格者に転職体験談をお聞きしました)
転職体験談をお聞きした方の情報
- お名前
高井宗介(30代前半男性) - 所属していた企業
今から約5年前に、社員20名程度の特許事務所に所属して仕事をしました。現在はエンジニア職を経て、知的財産調査会社で働いています。 - 保有資格
弁理士 - 特許事務所勤務時代の年収
固定給337万5000円(ボーナスは月収の3ヶ月分)+売上成果報酬 - 退職理由
所長弁理士との性格的な相性が悪く、パワハラ的な言動に耐えられなくなったため。個人事務所規模の特許事務所ではボスである所長弁理士の人格によって雇用環境が決まる部分が大きいので、注意が必要かと思います。
特許事務所を辞めたい理由①:意外に仕事内容が地味

日本だけでなく海外の特許庁を相手にする場合もあります。

弁理士というと、発明や創作で権利を持つ人のために、対外的な交渉ごとを含めてバリバリ仕事をするイメージがありますよね。
しかし、実際の特許事務所での業務は非常に「地味」です。
実際に働いてみたらイメージと違った…ということで辞めていく人は意外に多いですね。
具体的に特許事務所がどういう仕事をしているのかというと、
企業や個人が創り出したアイデア(発明)について「特許権」という権利を得るためのお手伝いをするのが仕事です。
具体的には、新しいアイデアの詳細を書いた書面を準備して、特許庁というところに提出します。
特許権は、私たちが作成する書面に記載された文字に基づいて「権利の範囲」が決まります。
簡単に言えば、どのような形で特許権取得の手続きを完了するか?によって、
その人(アイデアを作った人)の稼げるお金の金額が決まるわけですね。
言葉の選択や文法、図面作成など、非常に多くの事項を考慮しなければなりませんので、非常に神経を使う仕事です。
また、弁理士の仕事は英文和訳、和文英訳をすることが多いです。
必ずしも会話でのコミュニケーションはできなくても大丈夫ですが、読み書きはビジネスレベルでできたほうがいいですね。
特許事務所を辞めたい理由②:激務になりがちな仕事量


私自身、最初のうちは「書類に文字を記載していくのがメインの仕事なので、それほどしんどいこともないだろう」と思っていました。
ですが、弁理士の仕事は「1つの書類を作成して提出できたらそれで完了」ではなく、
最終的に「クライアントが望む形での特許権の取得に成功して完了」です。
こちらから書類を出すだけではなく、国内外の特許庁から送られてくる、
「〇〇という理由でこの発明には特許権を与えられない。」という書類にも応対します。
正直、仕事量は一般的な事務職の仕事と比較してかなり多いと思います。
新しいアイデアの詳細を書いた書面を1週間に1~2つ完成させていくイメージですね。
スケジュールがタイトになる時には残業も普通に発生しますので、体力勝負なところもあるでしょう。
実際、抱えている業務量がパンクしてしまって耐えられず、激務が理由で辞めていく人はたくさんいました。
特許事務所を辞めたい理由③:終電帰りが当たり前のブラックな雇用環境

転職活動時に所属する事務所をきちんと選ぶことが大切だと思います。

弁理士として働き始める前は、仕事さえしっかりしていればプライベートも充実させられると思っていました。
実際、私が勤務した特許事務所は、原則は9時~17時(休憩1時間)が勤務時間になっていました。
しかし、法律で決まっている期限までに大量の手続きをしなければいけない関係上、
定時に退所できることはほとんどないのが現実でした。
20時以降まで仕事をしていることが非常に多かったです。
終電で帰ることも多く、入所以来ほぼ毎月1回以上の徹夜をしていました。
また、ほぼ毎週の休日出勤があり、長時間残業も常態化していました。
この仕事は一人前に仕事ができるようになるまでは相当苦しい環境で働かないといけない場合が多いです。
まさに「修行して一人前になっていく職人」のような世界ですね。
もちろん、ちゃんと仕事ができるようになれば業務スピードも上がって行きますから、一生このような働き方が続く…というわけではないのですが。
特許事務所を辞めたい理由④:ほぼ成果報酬で不安定な給料

ただ、売上をたくさんあげられる人は成果報酬でかなりの金額を稼ぐ人もいますね。

「弁理士はなんだかんだで専門職だし、お給料は結構もらえるはず」と思っていました。
しかし、現実はなかなか厳しいですね。
というのも、特許事務所というのは「自分があげた売り上げに応じて給料が決まる」という形になっているところが多いからです。
私の所属していた特許事務所では、「自分があげた売上高の1/3が給料」という形になっていました。
例えば、年収400万円であれば、年間1200万円の売上高を求められるといった具合ですね。
もちろん、サラリーマンなので成果報酬とは別に固定給がありますが、こちらは300万円〜350万円程度が相場です。
固定給だけでも生活していけないことはないですが、売上を上げられないと、弁理士は正直にいって低年収です。
私の所属していた特許事務所の場合、徹夜しようが何時間残業しようが、残業手当のようなものはありませんでした。
「給料をあげたいなら売上がすべて」という感じです。
そのため、大量に仕事をこなしている人でも、給料が低い人はたくさんいましたね。
逆に、優良なクライアントを多く持っていて、
要領良く売上をあげられる人は仕事はそれほど忙しくなくてもたくさんのお給料を稼いでいる人もいました。
他の特許事務所の人と話をしても、こういう給与体系になっているところが多かったです。
交通費以外の手当が出る特許事務所は、比較的めずらしいのかなと思います。
特許事務所を辞めたい理由⑤:人間関係が極めてドライなタテ社会

入社前に社風や所長弁理士の考え方はよくリサーチしておくべきだと思います。

特許事務所は、基本的にドライな人間関係になっているところが多いですね。
私の所属していた特許事務所では、職員同士は最低限のコミュニケーションしかしないという感じでした。
職場は非常に静かで、わずらわしい人間関係は基本的にありません。
ただし、特許事務所には弁理士とは別に、総務事務スタッフ(多くが女性)も働いています。
女性の社会ではありがちですが、裏で弁理士や所長のことをいろいろと言っているようです。「おつぼね様」のような存在もいたりします。
彼女たちに嫌われると仕事が極めてやりにくくなりますから、所長弁理士も何もいえません。
(実際、所長から「事務にだけは逆らうな」と言われたこともありました)

パワハラ的な人もいるので所属事務所選びは要注意です。

これは弁理士に限らず、他の士業(弁護士や税理士など)も同じだと思いますが、
特許事務所の所長との関係は「師匠と弟子(ボスと部下)」というような関係になることが多いです。
なんでこうなるかというと、以下のような理由があります。
まず、弁理士という職種は、最終的には独立を目指す人が多いです。
しかし、「資格を取得していきなる独立」というわけにはいきませんので、
キャリアスタート時には個人事務所(たいてい小規模な組織)に所属して実務経験を積むことが多いです。
このとき、雇用する所長の側も「実務の勉強をさせてあげている」という意識が働くことが少なくないのです。
「どうせ仕事が一人前になったら辞めて独立していくんだから、こちらもそのつもりで雇ってあげる」という雰囲気ですね。
一人前に仕事ができるようになれば実力で食っていける世界ですが、そうなるまではボス所長との従属的な人間関係に耐える必要があるのが実情です。
弁理士という仕事の魅力:「職人」として実力で渡り歩いていけること


私し自身、もともとは特許事務所で長く働くつもりはなく、実務経験を積み、ステップアップの手段としか考えていませんでした。
そのため、多少理不尽なことがあっても割り切り、
ある程度スキルが身についた段階で退職するという選択をすることができました。
ただ、私が勤務していた特許事務所は結構特殊だったとも思います(実際、短期間で辞めていく人もかなり多かったです)
でも、かなり過酷な環境の特許事務所で働いてきた経験を評価していただいて、今は比較的良い環境で仕事ができていることも事実です(知的財産調査会社で働いています)
どんな仕事でも、やはり1つの職場である程度の実務経験を積まなければ次のステップには進みにくいです。
この業界のいいところの一つは、仕事の裁量の幅が広く、実務経験があれば働き先に困ることが少ないことです。
「この仕事は職人みたいなものだから」これは私が上司に言われた言葉です。
手に職をつけ、いろんな職場を実力で渡り歩いていくイメージですね。
丁寧な仕事をしていけば評価されやすい業界だとも思いますので、コツコツと仕事ができる人には向いている仕事です。
ただし、私が経験したような過酷な環境の特許事務所も多いのが現実です。
弁理士としてこれからキャリアをスタートする方は、
転職活動ではブラックな事務所を選択してしまわないように注意して欲しいですね。
弁理士のように、「専門士業」と呼ばれる職種では、キャリアをスタートした当初は劣悪な雇用環境に悩む人が少なくありません。
理由としては、「将来的に独立するから、実務経験を積めるのであれば雇用環境にはそれほどこだわらない」というスタンスで転職活動をしてしまう人が多いことが挙げられます。
転職活動をするにあたっては、実務経験を積めるのであればどこでも良いということではなく、
実現したい雇用環境を明確にした上で、求人を選ぶことことが大切だと思います。

終わりに
「今すぐは転職するかどうかわからない」という人も、転職サイトへの無料登録は早めにやっておく方が良いです。
仕事のストレスが限界に達してしまうと「新しい行動を起こす」ということができない心理状態になっていくからです。
そのまま放置すると深刻な事態になってしまいますよ。
(私は冗談抜きでこれで命を落としかけました)
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